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Mat.2 窓からのぞかないで

(マタイの福音書からのメッセージ、第2回です。本文は廃刊となりました月刊誌「ミーニング」に連載しておりました「希望の門」という藤巻先生のコラムより書き起こしています。)

ドイツの学者のエレミアスという人が、イスラエルに旅行したときの話です。彼はその時、ついでにエジプトの聖カタリナ修道院というところに行きまして、ちょっと休ませてほしいと申し出たのでございます。

そこの修道士は愛想よく「エレミアス先生、よくいらっしゃいました。どうぞこちらでお休みください」と言って、部屋に案内してくれたのでございますが、部屋を出る前に「先生、すみませんけれども、あそこの窓からはのぞかないでください」と答えて、少しソファーに身を横たえて休もうとしたんですけれども、「窓からのぞかないで」という言葉が非常にきにかかってしかたがない。寝ようと思ったんですけれども興奮してきて寝られない。そしてついにですね、彼はソファーを引いてきて、いすを置いて、その上に乗ってですね、バッと外を見たのでございます。

何かあるにちがいない、何かあるにちがいないと思ったんですけれども、何があったと思いますか。エレミアス先生は、何かとても大事なものがあるにちがいないと思って、首を上げたんですけれども、ビックリしたことに、先ほどの修道士が、ニヤニヤ笑って見ていたと、こういうのでございますね。

「窓から見るな」と、こう言われたんで彼は見ちゃった。その修道士のいう事には、「私たちはいつも、旅行者の方が来ると『見ないでくれ』と言う。すると必ず見る。ある方は一分三〇秒後、ある方は三〇秒後、という具合に決まって顔を出す。それを楽しみにして私たちは秒を数えながら待っているのだ」と、こういったんでございますね。

ですから、「見なさい」と言われたら、エレミアス先生も見なかったかもしれない。「見るな」と言われたから見ちゃったと、こういうことなんでございます。

旧約聖書に記されています神の民は、偉大な指導者であるモーセによって導かれ、彼を通して神の律法を与えられたにもかかわらず、荒野で失敗を繰り返し、滅んでいきました。

しかしマタイという人は、イエス・キリストさまを信じると、律法に言われている、「神を愛し、人を愛せよ」という命令が守っていけるようになると福音書で語っております。

(つづく)

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